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2006年 02月 08日

ケンちゃん。追ってこなかったよ・・・。

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丸山健二著、小説「見よ 月が後を追う」
前に読んだのは「いつか海の底に」で473P。今回は502P。読破。
「原発で精気を失った海辺の町。いわくつきのオートバイ。若者は送電線を辿って、都会へと出奔する―。光と闇の絶妙のコントラスト。疾走感溢れる文体。究極の小説世界を実現した、待望の書下ろし新作」という売り文句と前作の好感触から買いに至った本作。

結果・・大暴落。

もともとこのおやっさんの文章は約五行の編成からなりたっていて、しかも詩的表現の深みをいっている強烈な作風。かつてちょっと読んだ某氏と某氏は即座に拒否反応。
今回の作品は全編がかつて二人の男の死に立ち会ったいわくつきのオートバイの独白で語られるというもの。
前作はまだ主人公もよく走ったり、わけがわかんなくなったりして動きがあったし人物もだいたい十人くらいいたからよかったものの、今回は主な登場人物はバイクを入れても3人。しかも話はとてつもなく流れが遅い。
独白、独白、独白、独白、独白、十ページくらいめくるとようやくバイクのエンジンがかかったり、なにかを話したりする。こうなってくるとどうにも読んでいるこっちが訳がわからなくなったのでいよいよ最後50Pは斜め読み。斜め、斜め。
この独白のカンジはなんというか、ひたすらバイトで品物を流したりする時やひたすら一人で自転車で深夜走っている時になんか茫然としている自分の頭の中を悶々とめぐっている雑文を文章化するとこんなカンジなのではという気がした。だから段々疲れてくるんだ。

「理論のみに頼って未来を洞見しようとする者、
せせらぎの音に心を奪われながら花信を待つ者、
読みさしにしたままの書物に涎をたらして寝る者、
寝床で雨滴の声を聞くことに至福の喜びを覚える者、
何があっても端正な挙止を崩さず、容儀を乱さない者、
脂粉を凝らした身持ちのわるい女に痛めつけたがる者、
明晰な頭脳とダニのような母親を持っているために身動きできない者、
かれらのほうもだろうが、しかし私のほうだってかれらのような人間を拒否したい。
骨髄に徹する恨みを抱いて家郷を出たがる者、
険悪な空気と劣悪な労働条件に憔悴し切ってしまった者、
心中を打ち明けるほどの相手にいつまでも巡り合えない者、
この世は儚いものだと観じながらも、命数を全うしたいと願う者、
自説に固執し、誤った観念を抱き、それでも尚かい気炎をあげたがる者、
物議をかもす言葉や得手勝手な行動をどうしても慎むことができない者、
権力に対して痛烈な駁論を加えたくとも、その言葉を巧く組みたてられない者、
彼らのほうもだろうが、しかし私のほうだって彼らのような人間とは馬が合う。」

これが502P分あるわけです。耐えられるという御仁はぜひご一読。
あとね、こんな文章を書く人がそんなじいちゃんじいちゃんした人だと思わなかった。
いや、思いたくなかった。
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by s-tou-takahiko | 2006-02-08 00:17 | 雑想(制作以外)


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